古文書

水左記 自筆本

平安時代
東京都
公益財団法人前田育徳会 / 東京都

概要

『水左記(すいさき)』は、平安時代後期の公卿、源俊房(みなもとのとしふさ)によって記された日記です。書名は著者の姓である「源(さんずい=水)」と官職の「左大臣(左)」を組み合わせた名称で、別名『俊房公記』や『左府記(さふき)』とも呼ばれます。摂関政治から白河上皇による院政へと移行する過渡期の宮廷社会を、当事者の視点から克明に記録した、歴史的に極めて価値の高い史料です。

歴史的背景

著者の源俊房(1035年〜1121年)は、村上源氏の流れを汲む右大臣・源師房の子であり、白河天皇や堀河天皇の時代に長きにわたり左大臣を務めた実務派の公卿です。国宝に指定されている自筆本には、11世紀後半の永保元年(1081年)、同二年(1082年)、寛治二年(1088年)の記録が含まれています。この時期は朝廷の政治構造が大きく変容する時期にあたり、当時の政治決定プロセスや社会状況を理解する上で欠かせない一級の歴史資料となっています。

特徴と魅力

本作の最大の特徴は、著者である源俊房本人の筆跡が残る「自筆本」が現存しているという点にあります。

  • 希少な自筆本: 平安時代の日記の多くは後世の写本として伝わりますが、11世紀の執政者の自筆が直接残されている例は極めて稀であり、国宝指定の大きな理由となっています。
  • 有職故実の指針: 朝廷の儀礼、公事、慣習が詳細に記述されており、後世の公家たちが儀式の作法を学ぶ際の模範(有職故実)として重宝されました。
  • 紙背文書の重要性: 日記の裏面(紙背)には、地方官(受領)や、後に台頭する伊勢平氏の祖・平正盛らからの報告書や書状が残されています。これらは当時の地方統治や武士の動向を知るための貴重な副産物として、日記本体と同等以上の史料的価値を有しています。
  • 優れた保存状態: 加賀藩主・前田家に伝来した「尊経閣文庫」の至宝として、現在は公益財団法人前田育徳会によって厳重に保存・管理されており、平安時代の文書文化の粋を今日に伝えています。

出典: 国指定文化財等データベースより一部抜粋

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水左記 自筆本

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