宋版史記(黄善夫刊本)
基本情報
- 台帳ID: 201
- 管理対象ID: 10286
- 種別: 書跡・典籍
- 国: 中国
- 時代: 南宋
- 指定年月日: 1966年06月11日
- 都道府県: 千葉県
- 所在地: 国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市城内町117)
- 所有者名: 大学共同利用機関法人人間文化研究機構
出典: 国指定文化財等データベースより一部抜粋
概要
「宋版史記(黄善夫刊本)」は、中国の歴史家・司馬遷による歴史書『史記』の版本のうち、南宋時代に刊行された極めて希少かつ優れた一品です。福建省建陽の名門出版家である黄善夫によって手掛けられたこの資料は、中国印刷史上、また漢籍研究において最高峰の価値を持つものとして高く評価されています。全130巻のうち90冊が国立歴史民俗博物館に所蔵されており、その完成度の高さから世界の至宝と称されます。
歴史的背景
南宋時代の中国では、出版文化が隆盛を極めていました。特に福建省建陽は全国的な出版拠点(建本の本場)であり、黄善夫はその地を代表する名匠として知られていました。本作はかつて下総国佐倉藩(現在の千葉県佐倉市)の藩主であった堀田家に伝わった「堀田文庫」の旧蔵品です。江戸時代に日本へ渡来し、大名家で大切に保管されてきた経緯は、日本における漢学の伝統と文化受容の深さを物語る重要な歴史的証左となっています。
特徴と魅力
本資料は、学術的な実用性と美術的な工芸美を高度に両立させており、以下の点に大きな価値があります。
- 三家注合刻本の確立: 当時の代表的な三つの注釈(集解、索隠、正義)を初めて本文の中に組み込んで刊行した「三家注合刻本」の現存最古の例です。この形式は、その後の『史記』のテキスト形成において標準的な模範となりました。
- 力強い「建本」の書体: 唐時代の書家・顔真卿の流れを汲む、太く力強い骨格の書風が特徴です。端正な文字の配置と精巧な彫刻は、当時の高度な木版印刷技術の粋を伝えています。
- 優れた保存状態と刷りの美しさ: 宋版特有の鮮明な刷り上がりを今に留めており、墨色の冴えや紙質の良さを含め、美術工芸品としても第一級の完成度を誇ります。
- 歴史資料としての重要性: 日本における漢学の発展を支えた基礎文献であり、中国印刷史における至宝として、日中の文化交流史においても極めて重要な地位を占めています。