金銅石川年足墓誌
基本情報
- 台帳ID: 201
- 管理対象ID: 835
- 種別: 考古資料
- 国: 日本
- 時代: 奈良時代
- 指定年月日: 1952年03月29日
- 都道府県: 大阪府
- 所在地: 大阪府大阪市中央区大手前4丁目1-32
- 所有者名: 個人(大阪歴史博物館保管)
出典: 国指定文化財等データベースより一部抜粋
概要
金銅石川年足墓誌(こんどういしかわのとしたりぼし)は、奈良時代の公卿である石川年足(688年〜762年)の墓に納められていた墓誌です。1830年(文政13年)に現在の京都府乙訓郡大山崎町(円明寺)で出土したと伝えられています。銅板に金メッキを施した「金銅製」の板に、年足の官位や経歴、没年月日などが精緻な文字で刻まれており、当時の葬送儀礼や文字文化を知る上で極めて貴重な史料です。
歴史的背景
石川年足は、蘇我倉山田石川麻呂の孫にあたり、奈良時代の中期に活躍しました。聖武天皇から淳仁天皇の時代にかけて、文部大輔や参議などの要職を歴任し、最終的には正三位・中納言に至った有力な貴族です。 この墓誌が作られた天平宝字6年(762年)は、藤原仲麻呂(恵美押勝)が権勢を振るっていた時期にあたります。当時の貴族層の間では、故人の功績を後世に伝えるために、仏教的な死生観と中国伝来の墓誌の慣習が組み合わさり、このような金属製の墓誌が作られることがありました。
特徴と魅力
金銅石川年足墓誌は、その保存状態の良さと記述の正確性から、考古学・歴史学の両面で高く評価されています。
- 優れた工芸技術: 厚さ約3ミリの銅板に丁寧な鍍金(金メッキ)が施されており、千年以上を経てもなお黄金の輝きを保っています。
- 精緻な書体: 表面には13行、計130文字の漢字が整然と彫り込まれています。その書風は当時の流行を反映した端正な楷書体であり、奈良時代の書道史における重要な基準作となっています。
- 記録としての正確性: 墓誌には「正三位中納言兼御記理官治部卿(御記理官は中務省、治部卿は礼儀官の仲麻呂政権下での改称)」といった具体的な官職や、天平宝字6年9月30日に75歳で亡くなったことなどが記されており、『続日本紀』などの正史の記述を裏付ける第一級の同時代史料です。
- 歴史的価値: 日本で見つかっている古代の墓誌の中でも、被葬者が明確であり、かつ官位の高い人物のものは少なく、当時の貴族の葬祭の実態を雄弁に物語っています。