概要
『両京新記(りょうけいしんき)』は、唐代の中国において首都であった長安(西京)と副都の洛陽(東京)の地理・歴史・建築などを詳細に記録した地誌です。唐の韋述(いじゅつ)によって著されました。本作は、平安時代に書写された写本で、後に鎌倉時代の北条実時が創設した武蔵国金沢(現在の横浜市)の「金沢文庫(かねさわぶんこ)」に伝来しました。現存する『両京新記』の写本の中でも最古級かつ極めて貴重なものとして国宝に指定されています。
歴史的背景
原本は8世紀前半の唐時代に編纂されましたが、中国本土では早い段階で散逸してしまい、完全な形では残っていません。しかし、遣唐使などを通じて日本に伝来した写本が国内に保存されてきました。この「金沢文庫本」は、平安時代(10〜11世紀)に日本で書写されたもので、後に学問を重んじた金沢北条氏によって収集・蔵書されました。中国で失われた古代都市の姿を現代に伝える「逸書(いっしょ)」の写本として、世界的な歴史価値を有しています。
特徴と魅力
本作は、唐代の都市計画や宮殿、寺院、民居などの実態を知るための第一級史料として高く評価されています。
- 金沢文庫の旧蔵本: 巻末に「金沢文庫」の蔵書印があり、中世日本の代表的な図書庫である金沢文庫に収められていたことが明確であり、伝来の確かさが魅力です。
- 都市復元の鍵: 巻第三は長安城の西側(右街)の街区(坊)の構造や名称が克明に記されており、東アジアの都城制の研究において欠かせない内容を含んでいます。
- 書風と保存状態: 平安時代後期の端正な筆致で書写されており、文字の美しさとともに、保存状態が極めて良好である点も美術的・資料的に重要です。
- 日中文化交流の証: 中国で失われた書物が日本で大切に継承されてきたことを物語る、学術的意義の深い文化財です。
出典: 国指定文化財等データベースより一部抜粋